更新日:2026年4月22日 (水)

公開日:2024年4月16日 (火)

過失傷害罪とは|構成要件や起訴率は?傷害罪や重過失との違い

過失傷害罪とは|構成要件や起訴率は?傷害罪や重過失との違い 過失傷害罪とは|構成要件や起訴率は?傷害罪や重過失との違い

サマリー

過失傷害罪とは、不注意で人にケガをさせた場合に成立する犯罪です。

刑法第209条に定められており、法定刑は30万円以下の罰金または科料です。

例えば、歩きスマホなどでぶつかって転倒した相手が、骨折をしたようなケースが考えられます。

他にも過失の状況によって、問われる罪は異なります。

業務上の過失であれば業務上過失致死傷罪
不注意の程度が大きいと重過失致死傷罪
不注意による人身事故だと過失運転致死傷罪 など
過失傷害罪は、比較的軽微な犯罪ですが、被害者が刑事告訴をして起訴されると前科がつく可能性もあります。

この記事では次の点を解説します。

過失傷害罪の概要や時効や事例
過失傷害罪と似た犯罪の違い
過失傷害罪で逮捕される可能性
過失傷害罪でよくある質問
不注意で相手にケガをさせてしまったなど、加害者になってしまい、不安な方は参考にしてみてください。

過失傷害罪とは

ここでは、過失傷害罪の定義や法定刑、時効について解説します。

過失傷害罪の定義

過失傷害罪とは、過失により人にケガをさせた場合に成立する犯罪です。

(過失傷害)
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
引用:刑法第209条 – e-Gov

もともと刑法では、罪を犯す意思がない行為は罰さないと定めています(刑法第38条)。

同条には、法律に特別な規定がある場合はこの限りではないとしているため、過失傷害罪は刑法の特例だと言えるでしょう。

法定刑は罰金

過失傷害罪の法定刑は、30万円以下の罰金または科料が科されます。

科料とは、1,000円以上1万円未満の罰金のことで、法定刑には罰金しかない比較的軽微な犯罪だと言えます。

罰金刑が科されれば前科がつくことになります。

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過失傷害罪の時効

過失傷害罪の公訴時効は3年です(刑法訴訟法第250条)。

公訴時効とは、検察が犯罪を刑事裁判にして審理をするよう求めることができる(起訴)期限のことです。

また、過失傷害罪は親告罪になります。

親告罪 被害者の刑事告訴がないと検察が起訴できない犯罪のこと 

例:侮辱罪など

非親告罪 被害者が刑事告訴しなくても、検察の判断で起訴される犯罪のこと 

例:殺人罪など

親告罪でも被害を届け出れば捜査は行われますが、被害者が加害者を処罰してほしい(刑事告訴)と求めない限りは検察が刑事裁判にかけることはできません。

過失傷害罪の構成要件

構成要件とは、犯罪が成立する条件のようなものです。過失傷害罪が成立するのは、次の条件を満たした場合です。

  1. 過失があった
  2. 人がケガをするなど傷害の結果が起きた
  3. 過失と傷害に因果関係があった

過失があった

ここで言う過失とは、悪い結果が起こる可能性を考えて、その結果を回避するための義務を怠った不注意やミスのことを指します。

例えば、歩きスマホをすれば、相手にぶつかってケガをさせる可能性があることは予想できます。

しかし、歩きスマホの結果人をケガさせるわけがないと過信して、注意を怠り、ぶつかった場合、過失があったと考えられます。

人がケガをする傷害の結果が起きた

過失傷害罪の構成要件の2つ目は、過失により人がケガをする傷害の結果が発生したことです。

過失傷害罪の傷害とは、人の生理機能に障害を与える行為を指します。

相手に外傷を負わせるだけでなく、次のようなケースも傷害を与える行為だと解釈されています。

  • 病気を感染させる
  • 失神させる
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患を与える など

過失で単に相手とぶつかっただけで、相手がケガをする結果が生じてなければ、過失傷害罪に問われることはありません。

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過失と傷害の結果に因果関係がある

そして、過失のあった行為と、傷害の結果に因果関係が必要です。

例えば、過失でぶつかった相手が骨折をしたとしても、それ以前に交通事故に遭っていたり、激しいスポーツで痛めていたりすれば、骨折の原因が本当にぶつかったことによるものなのかどうかわかりません。

過失傷害罪の事例

ここでは、過失傷害罪となった事例を紹介します。

野放しの犬が噛みつき過失傷害罪で略式起訴

臼杵簡易裁判所は、女の子が大型犬に襲われ、重傷を負った事件で、飼い主の女性に30万円の罰金を命じました。

当時3歳だった女の子は、器官断裂など全治3か月のケガを負いました。

大型犬は、リードと首輪をつなぐ金具が外れており、飼い主の女性が管理不十分だったとして過失傷害罪で書類送検されていました。

2024年2月にも、群馬県で自宅から逃げた犬が、小学生を含む男女12人に嚙みつき、5人が搬送される事件がありました。

このように、過失で犬が逃げて人にケガを指せたような場合も過失傷害罪に問われることになります。

参考:逃げ出した大型犬が3歳女児にかみつき気管断裂など全治3か月、飼い主に罰金30万円 – 読売新聞オンライン

自転車で過失傷害罪になり略式起訴

名古屋簡易裁判所は、歩行者に自転車で衝突して骨折をさせたとして、自転車に乗っていた女性に20万円の罰金を命じました。

この事件は、当初女性が起訴されずに事件が終了になっていましたが(不起訴処分)、被害者が検察審査会に不服申し立てをしたことで、不起訴から略式起訴(罰金刑)になった珍しい事例です。

また、自転車に乗っている際に、不注意で相手にケガをさせてしまうと過失傷害罪よりも、もっと重い重過失致傷罪に問われることも考えられます。

  • 不起訴処分:刑事裁判にならず事件が終了すること
  • 略式起訴とは:刑事裁判を行わずに簡易的な書類だけで罰金刑を科す手続き
  • 検察審査会とは:不起訴処分に対して国民から選ばれた検察審査員が審査をする制度

参考:自転車で歩行者に衝突 運転の女性、不起訴後に略式起訴 – 朝日新聞デジタル

過失傷害罪と傷害罪の違い

過失傷害罪とよく似た犯罪に、傷害罪や過失致傷があります。

傷害罪は、人の身体を傷害した場合に問われる罪で、被害者がケガをしたという結果は、過失傷害罪と同じです。

違いは過失か故意かにあります。

罪名 内容
過失傷害罪 注意を怠ったことで相手にケガをさせた(過失)
傷害罪 相手に暴力をふるってやろうと思い、暴行してケガをさせた(故意)

このように、意図的に相手に暴行を加えてやろうと思い暴力を働き、ケガを負わせるという重い結果を生じさせ傷害罪が成立すると、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と、過失傷害罪よりも重い処分が科されます。

(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法第204条 – e-Gov

相手に暴力を加えようと思い、暴行を行っていれば、傷害罪だと判断されるでしょう。

一方で、暴力を加える意図を持ち暴行を加えるなどしていないにも関わらず、相手がケガをすれば過失だと判断される可能性があります。

過失傷害で問われる可能性のある罪

過失傷害罪は、過失の程度や、状況によって成立する罪が左右されます。

ここでは、過失で相手にケガをさせた場合に、問われる可能性のある罪を解説します。

過失致死罪

過失致死罪は、過失により人が亡くなった場合に適用されます(刑法第210条)。

過失という点では、過失傷害罪と同じですが、過失により相手が亡くなっているという結果は重大であるため、法定刑も50万円以下の罰金となります。

当初は相手がケガをしただけだとしても、そのケガが原因で亡くなれば、過失致死罪が適用されることになります。

重過失致死傷罪

重大な過失によって、人にケガをさせると過失致傷罪、人を死亡させると重過失致死罪に問われることになります(刑法第211条)。

過失傷害罪との違いは、過失が重大かどうかです。

重過失とは、わずかな注意さえ払えば結果の発生を回避できた場合に該当します。

重過失致死傷罪で記憶に新しいのは、2017年に自転車に衝突されて転倒した高齢者が亡くなった事件です。

電動自転車を運転していた大学生は、左手にスマホ、左耳にイヤホン、右手に飲み物を持った状態でした。

普通にスマホを見ずに前方を注意しながら自転車を運転すれば、歩行者を死傷させることはありません。

このわずかな注意さえ払えば回避できた結果を生じさせてしまった場合に、重過失に問われる可能性があります。

重過失と聞くと、人が亡くなるなどの重大な結果だったからのように聞こえますが、わずかな注意すら怠ったことが重大な過失だと判断されます。

重過失致死傷罪の法定刑は5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金と、過失傷害罪と比べると重いことがわかります。

業務上過失致死傷罪

業務上過失致死傷罪は、業務の上で必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に適用されます(刑法第211条)。

この業務というのは、仕事にとどまらず、社会生活を維持する上において、反復・継続して行う行為で、その行為が人の生命や身体などに危害を加える恐れがあるものと解釈されています。

例えば工場での危険な作業など以外にも次のようなものが該当します。

  • 医療行為
  • 児童の保育
  • 土木建設
  • ボランティアなどの非営利活動 など

業務上過失致死傷罪の法定刑は5年以下の懲役もしくは禁固、または100万円以下の罰金と、過失傷害罪と比較すると重い罰則が科されます。

業務を行うものは、業務上で高度な注意義務が求められるとされているからです。

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過失運転致死傷罪

自動車を運転中に過失によって人を死傷させた場合に成立するのが、過失運転致死傷罪です。

過失運転致死傷罪は、運転者に求められる次のような義務を怠り、結果を生じさせたことが過失だと判断されます。

  • 前方不注意(わき見、車間距離不保持など)
  • 速度超過
  • 一時停止や徐行の無視 など

例えば、前方不注意や、ブレーキとアクセルを間違えて人身事故を起こしたようなケースが考えられます。自動車事故で最も適用されることが多い罪です。

過失運転致死傷罪は自動車運転処罰法の第5条に定められており、法定刑は7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金です。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、正常な運転が困難な状態で自動車を運転し、人を死傷させた場合に適用されます。

危険運転とは、次の6つの行為だと定められています。

  1. 飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難な状態で走行させる
  2. 制御不能な速度で走行させる
  3. 他人の車の通行の妨害を目的として割り込みや急接近をして、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
  4. 赤信号を殊更に無視し、大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
  5. 通行禁止道路へ進入し、大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
  6. 運転技能が未熟な状態で走行させる

参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 – e-Gov

過失運転致死傷罪との違いは、こうした危険な運転が定められているだけでなく、自身の運転行為が危険であると認識があった(故意)場合に成立します。

上記のような危険な運転で人を負傷させた人は15年以下の懲役、人を死亡させた人は1年以上の有期懲役が科されることになります。

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過失傷害罪は逮捕される?

もし不注意で人をケガさせた場合、過失傷害罪として逮捕される可能性はあるのでしょうか?

逮捕されるケースは少ない

過失傷害罪で逮捕されるケースがあるとすれば、通報されて警察に現行犯逮捕された場合や、被害届や告訴状が警察に出されて捜査の末、通常逮捕される場合でしょう。

通常逮捕とは、警察が起きた事件を捜査し、証拠をもとに裁判所に逮捕状を請求した上で、被疑者のもとを訪ねて行う逮捕のことです。

もっとも通常逮捕の場合は、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪は、容疑者(被疑者)が定まった住所がない、または正当な理由なく出頭に応じない場合に限るとされています(刑事訴訟法第199条)。

過失傷害罪の法定刑は30万円以下の罰金または科料であるため、住所不定であったり、出頭を拒否したりしない限り逮捕されることはないと考えられます。

もし警察や検察から出頭するようにいわれたら、素直に応じるようにしましょう。

過失傷害罪の起訴率は13.6%

逮捕がされなかったとしても、警察や検察に捜査される可能性はあります。

検察の資料によると、2021年の過失傷害罪の起訴率は13.6%です。

起訴とは、裁判所に事件の処分を判断してもらうために、検察が審理を求めることです。

過失傷害罪は親告罪であるため、被害者が警察や検察に告訴すると、起訴される可能性があります。

起訴後は99%と高確率で有罪になる可能性があり、有罪となると前科がつくことになります。

参考:e-Stat 政府統計の総合窓口

過失傷害罪では示談交渉がカギ

先述したとおり、過失傷害罪は親告罪であるため、被害者に謝罪して示談することで告訴を取り下げてもらえる可能性があります。

告訴が取り下げられて、不起訴となり処分されなければ罰金が科されることも、前科がつくこともありません。

もし被害者と示談をしたいのであれば、弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。

  • 検察から被害者の連絡先を教えてもらえる
  • 第三者である弁護士が介入することで、感情的になっている被害者と冷静に交渉できる可能性がある
  • 個人間の交渉で発生するトラブルが防止できる
  • 適切な示談金が判断でき、不当請求を受けるおそれがない
  • 告訴を取り下げることを条件とした示談書を作成してもらえる など

他にも、逮捕されてしまった場合は早期釈放が期待でき、重い処分が下されないように働きかけてくれる可能性があります。

過失傷害罪で被害者のケガが重いなど、不安になっている人は弁護士に相談しましょう。

過失傷害罪でよくある質問

ここでは、過失傷害罪でよくある質問に回答します。

過失傷害罪は親告罪なので逮捕されない?

過失傷害罪は親告罪ですが、逮捕される可能性がゼロとは断言できません。

「逮捕されるケースは少ない」で解説したとおり、住所が不定だったり、理由なく出頭を拒否したりすると、逃亡や証拠隠滅が疑われ、逮捕される可能性があります。

同様に、刑事告訴された場合も、警察により捜査されることになるため、逮捕の要件を満たしていれば逮捕される可能性があるということです。

自転車事故は過失傷害罪になる?

自転車事故の場合、過失の程度に応じて、過失傷害罪、もしくは重過失致死傷罪に問われる可能性があります。

わずかな注意すら怠ったとすれば、重過失致傷罪に問われ、過失傷害罪よりも重い5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

過失傷害罪の示談金の相場はいくら?

過失傷害罪の示談金には、はっきりとした相場はありません。

示談金には、ケガの治療費や通院費、働けなくなった場合の休業損害、精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれるからです。

参考程度ですが、傷害事件で慰謝料としての示談金の相場は次のとおりです。

  • 全治1週間など軽いケガの場合は10~30万円程度
  • 全治2~3週間のケガの場合は30~150万円

ケガが軽いような場合は、おおよそ10~30万程度かかる可能性があるでしょう。

まとめ

過失傷害罪は、過失の大きさ、業務上だったのか、車を運転していたのかどうかなどにより、罪名も法定刑も大きく異なります。

場合によっては、被害者を死に至らしめると、刑事事件だけでなく、民事裁判で損害賠償請求を受ける可能性もあります。

過失傷害罪の場合は、親告罪であるため、被害者に謝罪と賠償を尽くすことで告訴されずに済むかもしれません。

もし被害者に謝罪したい、あるいは、被害者のケガの程度が重傷など不安であれば、弁護士を通して謝罪を申し入れることが大切です。

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