更新日:2026年4月21日 (火)

公開日:2023年3月17日 (金)

危険運転致死傷とは?|罰則や弁護活動について解説

危険運転致死傷とは?|罰則や弁護活動について解説 危険運転致死傷とは?|罰則や弁護活動について解説

サマリー

あおり運転等の妨害運転のニュース映像をよく目にするようになりました。近年ドライブレコーダーを搭載する車も増え、ドライブレコーダーの映像を元に摘発されるケースも増加しています。

この記事では、危険運転致死傷罪で逮捕された場合にどのような罰則が科されるか等について解説します。

危険運転致死傷罪とは?

危険運転致死傷罪に該当するとされた場合の罰則や、危険運転致死傷罪に該当する行為等について解説します。

危険運転致死傷罪の罰則

危険運転致死傷罪に該当するとされた場合に科される罰則についてお伝えします。

危険運転致死傷罪に該当する場合以下の刑に処せられます。

  • 人を負傷させた場合には15年以下の懲役
  • 人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役

そして、刑法には刑罰の範囲についての規定があります。

刑法第12条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。

引用:e-GOV法令検索

以上から、刑罰は以下のようになります。

  • 人を負傷させた場合には1月以上15年以下の懲役
  • 人を死亡させた場合には1年以上20年以下の懲役

危険運転致死傷罪制定の経緯

危険運転致死傷罪が制定された経緯について解説します。

自動車運転中に過失で人を死傷させた場合、以前は刑法第211条の業務上過失致傷の罪に問われていました。

刑法第211条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

引用:e-GOV法令検索

飲酒運転などによる悲惨な事故の増加に伴い、従来の罰則「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」では軽すぎると、厳罰化を求める声が相次ぎ、平成13年刑法の一部改正で危険運転致死傷罪が新設されました。

さらに平成19年の刑法の一部改正で自動車運転過失致死傷罪が追加されました。

運転の悪質性や危険性の増大に伴い、行為の程度に見合った処罰を可能にするため、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷行為処罰法)が刑法とは別に独立して新たに制定され、平成26年5月から施行されました。

危険運転致死傷罪の条文

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の第2条に刑法からの危険運転致死傷罪を移し、危険行為の類型を追加整備しました。第3条には危険性が軽いアルコール等薬物の影響による運転行為を規定し、第4条には過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が新設されました。

第2条等に定める危険運転致死傷罪が適用される行為とは?(6つに分類)

自動車運転死傷行為処罰法に定められている、危険運転致死傷罪が適用される6つの行為について解説します。

アルコール又は薬物の影響による運転

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態、あるいはその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転する行為のことです。

薬物とは覚せい剤や大麻等だけではなく、風邪薬等の治療薬も当てはまります。

人身事故が発生しなかった場合でも、正常な運転が困難な状態あるいはその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転しただけで、取り締まりの対象となります。

制御困難な高速度による運転

車をコントロールできないほどの猛スピードでの自動車の運転は、その行為だけで既に周囲に危険が及びます。事故を起こせば同乗者や歩行者等を死傷させる可能性があります。

事故を起こさなかった場合でも、制限速度違反として取り締まり対象になります。

制御技能を持たずに運転

自動車は運転を誤ると人を死傷させる可能性があります。進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させることは、運転者本人だけではなく、周囲の人を巻き込み死傷させる可能性がある危険な行為です。

通行を妨害する目的での運転

他人の自動車・オートバイ・自転車・人の通行を妨害する目的で運転する行為は、相手の生命身体に危害を及ぼす可能性が非常に高い危険な行為です。

具体的には以下の行為です。

  • 走行中の自動車の前への強引な割込み
  • 正当な理由のない急停止
  • あおり運転
  • 人やオートバイへの幅寄せ行為 など

赤信号無視し危険な速度での運転

赤信号またはこれに相当する信号を無視し、かつ、交通の危険を生じさせる速度で運転する行為は、歩行者等の生命身体に危害を及ぼす可能性が高い危険な行為です。

赤信号等を無視することと、危険な速度で運転する行為の両方を行った場合に該当します。

通行禁止道路を危険な速度で運転

通行禁止道路とは、主に以下の道路のことです。

  • 歩行者天国中の道路
  • 一方通行の逆走
  • 高速道路の逆走
  • スクールゾーン時間帯進入禁止の道路 など

これらの道路を危険な速度で運転する行為は、人が死傷する可能性が高い行為です。

危険運転致死傷罪に該当するとされた事例

危険運転致死傷罪に該当するとされた事例を紹介します。

事例1  アルコールの影響

運転開始前に飲んだ酒の影響により、前方の注視が困難な状態で普通自動車を時速約100キロメートルで走行させた結果、前方を走行中の被害車両右後部に自車左前部を衝突させ、その衝撃により被害車両を左前方に逸走させて橋の上から海に転落・水没させた事例です。

<争点>アルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあるか

<判断>「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」であったか否かを判断するにあたっては、事故の態様のほか、事故前の飲酒量及び酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果等を総合的に考慮すべきであるとしました。

本件追突の原因は、被告人が被害車両に気付くまでの約8秒間終始前方を見ていなかったか又はその間前方を見てもこれを認識できない状態にあったかのいずれかです。いずれであっても、アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処できない状態にあったと認められ、かつ、被告人にそのことの認識があったことも認められるので、被告人はアルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自車を走行させ、よって人を死傷させたものというべきであるとしました。

事例2  薬物の影響

普通自動車を運転中、先に服用した精神神経用剤(パキシル錠)等の影響により、前方注視及び運転操作が困難な状態になることを予測したのに、車の運転を続け高速道路を時速約100キロメートルで走行させました。薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、自車を右側防護壁に衝突させた上、左前方に逸走させて、前方を同一方向に走行中の普通乗用車2台に自車を玉突き衝突させた事例です。

<争点>薬物の影響により正常な運転が困難な状態にあるか

<判断>本件事故に至るまでの客観的事実及び被告人の捜査段階における供述を総合すると、被告人が運転前に服用した薬剤の影響により、前方注視や道路・交通状況に応じたハンドル、ブレーキ等の操作を意図したとおりに行うことが困難な心身の状態、すなわち、正常な運転が困難な状態に陥ったことはもとより、被告人がその旨認識していたことを優に認定できるとしました。

事例3  高速度

最高速度50キロメートル毎時と指定されている右方に湾曲する道路を進行するにあたり、その進行の制御が困難な時速約90キロメートルの高速度で走行させたことにより、後部車輪を左方に滑走させて、ハンドル操作の自由を失い、自車を左斜め前方に暴走させて歩道上にいた被害者3名に衝突させた事例です。

<争点>進行の制御が困難な高速度かどうか

<判断>「進行の制御が困難な高速度」とは、速度が速すぎるため道路の状況に応じた自車の進行が困難な速度をいいます。具体的には、そのような速度での走行を続ければ道路の形状・状況、車両の構造、性能等の客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させるような速度をいうと解されます。

本件事故は、被告人車が高速度で本件カーブに進入したことに加えて、わずかにハンドルを右に切りすぎて内小回りとなったことによって発生しました。このハンドル操作のミスの程度はわずかであり、しかも、本件では飲酒や脇見等の事実もなく、被告人がそのようなミスをしたのは、ひとえに自車が高速度であったためと考えられました。加えて他の車両の実勢速度と比較しても相当程度速かったといえる。被告人車の速度は本件カーブの限界旋回速度に近い高速度であり、そのような速度での走行を続ければ、ハンドル操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させるような速度であったことから、進行を制御することが困難な高速度に該当するとしました。

事例4  進行妨害・著しく接近

普通自動車を運転し、時速40ないし50キロメートルで進行中、対向進行してくる自動二輪車数台を認め、自動二輪車の通行を妨害する目的で、自車を道路右側部分に進入させ自動二輪車に著しく接近させました。運転手に急制動の措置を採らせて横転させ、横転直前の自動二輪車に自車を衝突させた事例です。

<争点>①「車に著しく接近し」、②「進行を妨害する目的」であったか

<判断>①について。被告人車両と被害車両の相対速度は、時速80ないし100キロメートルで、秒速約22ないし28メートルに相当しました。被告人車両が右にハンドルを切り、中央線を越えてから衝突まで、2秒足らずの極短い時間しかなく、すれ違う直前になって急ハンドルを切ったと認められました。さらに被告人車両は、衝突の直前で左にハンドルを切ったことが認められましたが、それまでの間は被害車両に向かって接近し続けており、被告人車両が被害車両に接近したことは明らかでした。また、被告人が被害車両の動きを見ていなかったとうかがわれる事情はなく、その状況を十分認識していたと認められ、故意が認められました。

②について。被告人は、被害車両とすれ違う直前に右に急ハンドルを切って、被告人車両を対向車線内に進出させ、衝突直前まで被害車両に著しく接近させました。被害者に対し、急に進路を変更するなどの衝突を回避する措置をとらせようとしたものと認められました。被害者に自車との衝突を避けるために急な回避措置をとらせるなど、被害者の自由かつ安全な通行の妨げを積極的に意図する行為と解され、被告人には「通行を妨害する目的」があったとしました。

事例5  赤信号殊更無視

普通自動車を運転し、パトカーで警ら中の警察官に赤信号無視を現認・追跡され、逃走するため交差点の対面信号機が赤信号を表示していたのを殊更に無視しました。さらに重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約70キロメートルで自車を運転し、同交差点に進入し、交差点内を横断中の歩行者をはねて死亡させた事例です。

<争点>赤信号を殊更に無視したかどうか

<判断>赤信号を「殊更に無視し」とは、およそ赤信号に従う意思のないことをいいます。赤信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく進行する行為もこれに含まれます。従って被告人の上記行為は、赤信号を殊更に無視したものに当たるとされました。

危険運転致死傷罪で逮捕された後の流れ

危険運転致死傷罪で逮捕された後の流れについて解説します。

逮捕・勾留

危険運転致死傷罪は危険で無謀な運転をしたことにより人を死傷させた場合に成立する罪です。そのため危険運転致死傷罪は逮捕される可能性が高く、逮捕された場合にはそのまま身柄が拘束され、勾留期間満期まで最大で23日間勾留される可能性があります。

起訴あるいは不起訴

危険運転致死傷罪は重大な事件であるため、初犯であっても不起訴になる可能性は低いです。

刑事裁判

起訴されると公開の法廷で審理されます。危険運転致死傷罪の場合、ニュースで報道されることも多く、そのような事件では人々の関心も高いため、毎回多数の傍聴人が詰めかける可能性があります。自分の行為が知り合いに知られてしまう可能性もあります。

日本の刑事裁判の場合には起訴されると99.9%が有罪になります。

危険運転致死傷罪の刑罰は以下の通りです。

  • 人を負傷させた場合には1月以上15年以下の懲役
  • 人を死亡させた場合には1年以上20年以下の懲役

上限が非常に設定されているため、実刑判決がくだされ長期間刑務所に収容される可能性があります。

有罪となった場合でも、被告人が真摯に反省している場合等では執行猶予が付く可能性もあります。執行猶予が付けばそのまま身柄が解放され、通常の生活ができます。執行猶予期間に何らの罪も犯さず過ごせば、刑務所に収容されることなく終了します。

危険運転致死傷罪で逮捕された場合の弁護活動

危険運転致死傷罪で逮捕された場合に弁護士がする活動について解説します。

早期の身柄解放を目指す

危険運転の行為態様がそれほど酷くない場合には、勾留前に身柄が解放される可能性があります。

飲酒による危険運転の場合には、今後二度と飲酒運転をしないためアルコール依存症の治療を受ける、飲酒することがわかっている場合には車を利用しない、あるいは家族に付き添ってもらう等の今後の対策をしっかり立て、弁護士が書面で検察官等に報告することにより在宅事件になる可能性があります。

 

勾留の必要性が無いことを主張する書面を検察官に提出する、勾留請求された場合には勾留を認めるべきではないことを主張する意見書を裁判官に提出する等により、被疑者の早期の身柄解放を目指す弁護活動をおこないます。

示談交渉する

危険運転致死傷罪の場合には被害者の方あるいはそのご遺族の方と示談交渉できる可能性は低いです。

危険運転致死傷罪に該当する行為が例えば持病の薬物の影響だったり、軽い飲酒運転等で被害者の方が軽傷で済んだりした場合には、示談交渉に応じてくれる場合もあります。

被害者が示談交渉に応じてくれる場合には弁護士は起訴前の示談成立のため全力を尽くします。

起訴前に被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性がでてきます。

刑の減軽を目指す

起訴された場合には、被告人にしっかりと反省を促し、被告人が書いた反省文を裁判所に提出、今後同様の事件を起こさないための家族の協力等環境整備について報告書の提出等をして、より軽い罪になるよう弁護活動をおこないます。

まとめ

危険運転致死傷罪は、行為態様や結果の重大性によっては実刑判決を言い渡される可能性が高い罪です。

危険運転致死傷罪に該当する行為をしてしまった場合には早期に弁護士に依頼し、より軽い罪の言い渡しを得られるような弁護活動をしてもらうことが必要です。

危険運転致死傷罪でお困りの方は,お気軽に当事務所にご相談ください。

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