更新日:2026年4月21日 (火)

公開日:2022年8月5日 (金)

準抗告とは|刑事手続きにおける不服申立手段

準抗告とは|刑事手続きにおける不服申立手段 準抗告とは|刑事手続きにおける不服申立手段

サマリー

準抗告とは一体何でしょう?よくわからないけれど、裁判所や捜査機関に文句を言うことのような気がする・・・くらいの感想をお持ちではないでしょうか?

この記事では、刑事事件における準抗告とはどのような手続きなのかについて、詳しく解説します。

準抗告とは

刑事事件における準抗告とは、簡単に言えば、捜査機関や裁判官が下した処分や決定に対して不服を申し立てる手続きのことです。

準抗告の概要(刑事訴訟法第429条)

刑事訴訟法第4章には「抗告」について規定している条文がありますが、その中の1つに準抗告についての条文があります。

第四百二十九条 裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。

一 忌避の申立てを却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
(抜粋)
第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
(抜粋)

刑事手続きにおいて準抗告等が問題となるのは、裁判官がした勾留、保釈に関する裁判や、捜査機関がした接見に関する請求および処分です。

準抗告と抗告の違い(刑事訴訟法第419条)

準抗告とは、裁判官がした裁判に対する不服申立の手続き、あるいは検察官又は検察事務官がした処分に対する不服申立の手続きです。それに対して抗告とは、裁判所がした決定に対する不服申立の手続きです。

第四百十九条 抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。

引用:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

がしたことに対する不服申立かによって、準抗告抗告かが決まります。

準抗告と特別抗告の違い(刑事訴訟法第433条)

特別抗告とは刑事訴訟法の条文を根拠に不服の申し立てができない決定又は命令が、憲法違反や判例違反にあたる場合に最高裁判所に特別に不服申し立てをすることです。

第四百三十三条 この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

(抜粋)

引用:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

第四百十五条 上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正することができる。
② 前項の申立は、判決の宣告があつた日から十日以内にこれをしなければならない。
③ 上告裁判所は、適当と認めるときは、第一項に規定する者の申立により、前項の期間を延長することができる。

準抗告が認容される確率

刑事手続きにおいて勾留請求に対する準抗告は被疑者・被告人の人権を守るために重要な働きをしますが、準抗告が認められる確率はどれくらいあるのでしょう?

令和2年版犯罪白書によると、勾留請求された場合の却下率は、平成28年には3.5%でしたが、令和元年には5.2%にまで微増しています。勾留請求率はほぼ横ばいで、約92%となっています。

逮捕されると、9割を超える人が勾留請求され、ほぼすべての請求が認められてしまいます。

準抗告できる場合

準抗告できる場合とはどのような場合でしょうか?

準抗告できる裁判官の裁判5つ

刑事訴訟法第429条に記載されている裁判は以下5つです。

  • 忌避の申立を却下する裁判
  • 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
  • 鑑定のため留置を命ずる裁判
  • 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
  • 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

上記5つの裁判に対しては、その裁判官が所属する裁判所に(簡易裁判所の裁判官がした裁判の場合には管轄の地方裁判所に)、不服申し立てができます。不服申し立てをすると、最初に裁判をした裁判官を除いた裁判官が3名で審査するため、より公正で慎重な判断が期待できます。

それぞれ簡単に内容を説明します。

忌避の申立を却下する裁判

忌避の申立とは、担当の裁判官を変えてもらいたい時に裁判官の変更を申し立てる事です。裁判官が事件と特殊な関係、例えば被害者の親族であり不公平な裁判をする恐れがある場合に申し立てします。忌避の申立が却下された場合に、準抗告が可能です。

勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

検察官送致後に勾留決定された場合に、準抗告が可能です。勾留するためには要件が必要となるので、勾留要件が無いことを主張します。

起訴後もそのまま勾留されている場合には、弁護士は保釈請求をします。保釈請求が却下された場合には、第1回公判期日までは準抗告申立ができます。

押収又は押収物の還付に対する準抗告は、被疑事実とは直接関係のない物を押収されそうなとき、あるいは押収された物の返却を求めたけれど却下されたとき行います。

鑑定のため留置を命ずる裁判

責任能力のない者が事件を起こした場合には、刑事責任を問えません。被疑者あるいは被告人に刑事責任を問える能力があるか、精神鑑定をすることがあります。

初公判前に捜査機関が、責任能力を問えるかどうか精神鑑定するために留置を求め、裁判官が留置決定をする場合があります。この決定に対しても準抗告の申し立てができます。

証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずるとは、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が刑事手続きにおいて間違いを起こしたとき、その間違いに対して過料の支払いやかかった費用の賠償を命じるものです。費用の支払い等を命じられた証人らは、準抗告の申し立てができます。

身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

刑事事件では捜査の過程で、被疑者の身体の検査をする必要が生じることがあります。身体検査令状が発付された場合にはそれに従うことを求められますが、被疑者が拒否した場合に、いきなり強制的に検査をするのではなく、まずは過料又は費用の賠償を命ずることにより身体検査に任意に応じるように間接的に強制します。間接的な強制である過料又は費用の賠償を命じられた時に準抗告の申し立てができます。

準抗告できる検察官の処分2つ(刑事訴訟法第430条・39条3項)

  • 接見の日時・場所・時間の指定に関する処分
  • 押収若しくは押収物の還付に関する処分

上記2つの検察官のした処分に対しても準抗告の申し立てができます。

準抗告の結果判明時期

準抗告を申し立てると即日または翌日には結果がでます。

準抗告に関する弁護士の活動

被疑者本人が準抗告を申し立てて、裁判所に認めてもらうことは困難です。専門的な知識を持つ弁護士に依頼しましょう。弁護士がする活動について解説します。

勾留に関する裁判に対する準抗告

勾留するためには、勾留の要件を満たしている必要があります。勾留の裁判に対する準抗告では、勾留の要件を満たしていないことを主張します。

勾留に関する弁護士の活動のタイミングは以下3つです。

  • 検察官が勾留請求をする前
  • 勾留請求直後・・・裁判官宛に勾留請求却下のための意見書を提出
  • 勾留決定後・・・裁判所宛に準抗告を申し立てる

勾留請求されないように働きかけをし、勾留請求されてしまったら認めないように働きかけます。勾留決定されてしまったら準抗告を申し立てます。

検察官が勾留請求をする前

検察官宛に勾留請求回避のための意見書を提出します。被疑者を勾留する必要性がないことや、勾留請求の相当性を欠くことを主張して、勾留請求を見送るように働きかけます。勾留請求されずに済めば、逮捕後最長でも72時間以内に身柄が解放されます。

勾留請求直後

裁判官宛に勾留請求却下のための意見書を提出します。検察官が勾留請求をした場合に、検察官の勾留請求は必要性・相当性を欠いているとして裁判官に働きかけます。裁判官との面接を通じて勾留を許可しないように求めることで、勾留請求が却下される可能性があります。

勾留決定後

裁判所宛に準抗告を申し立てます。裁判官が勾留許可決定をした場合に、裁判官の決定に対して不服を申し立てます。逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれが無い事を具体的に主張し、勾留の要件を満たしていないことを裁判所に対して主張します。

勾留取消請求

勾留された後に勾留の理由又は必要性がなくなった場合に、勾留の取消請求ができます。

準抗告は、勾留決定が不当であることを主張するものであるのに対して、取消請求は、不当ではなかったけれどその後に勾留の理由又は必要がなくなったので、勾留決定を取り消して欲しいと請求するものです。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
② 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

保釈請求却下に対する準抗告

保釈とは、起訴後も勾留が続くときに保釈金の納付等を条件として、被告人の身柄を解放する決定です。

弁護人が被告人の保釈請求をし、裁判所がこれを却下する決定を行った場合には、弁護人は保釈の要件を満たすことを主張して保釈請求の却下決定に対する準抗告の申し立てができます。

反対に、裁判所が被告人の保釈を許可する決定をした場合に、検察官が、保釈決定に対する準抗告の申し立てもできます。

検察官が保釈決定に対する準抗告を申し立てた場合には、被告人は準抗告の判断が出るまで釈放されません。

まとめ

準抗告とは何か、どのような時におこなうのか等について解説しました。準抗告は被疑者あるいは被告人本人による対応が困難です。逮捕されてしまった場合には早期に弁護士に依頼して、長期の身柄拘束を避ける活動をしてもらうことをお勧めします。

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