更新日:2024年12月3日 (火)

公開日:2024年6月10日 (月)

脅迫罪の刑罰は懲役?脅迫罪の示談金の相場や強要罪との違い

脅迫罪の刑罰は懲役?脅迫罪の示談金の相場や強要罪との違い 脅迫罪の刑罰は懲役?脅迫罪の示談金の相場や強要罪との違い

サマリー

脅迫罪とは、相手の生命、身体、自由、名誉、または財産に対して危害を加える旨を告知して(害悪の告知)人を脅迫した場合に成立する犯罪です。

脅迫罪の対象となるのは、脅迫した本人とその親族です。

友人や恋人の生命などを脅かすような発言をしても、脅迫罪は成立しません。

例えば、次のような言葉は脅迫罪が成立すると考えられます。

生命への害悪の告知 殺す、あの世に送ってやる など
身体への害悪の告知 殴る、二度と口をきけないようにしてやる、夜道に気をつけろ など
自由への害悪の告知 二度とここから出られないようにする など
名誉への害悪の告知 会社にばらすぞ、ネットに書き込んでやる など
※事実かどうかは問わない

財産への害悪の告知 家を燃やすぞ、あの車を使えなくしてやる など
これはほんの一例です。具体的にこのような言葉を投げかけると脅迫罪になるといった基準はありません。

しかし、警察などに被害を訴えるために通報する、訴えるという正当な言葉であっても、脅迫を目的としている場合、脅迫罪が成立する可能性があります。

また、脅迫した人が、実際に実行可能、あるいは間接的に加えることができる害でなければ成立しません。

例えば、「お前をミサイルで攻撃してやる」と相手に告げても、発言した人が実現可能な事象ではないため、脅迫罪にはなりません。

脅迫罪は一見軽微な犯罪だと思われがちですが、悪質だと判断されると懲役が科されることもあり得ます。

この記事では、脅迫罪について次の点を解説します。

脅迫罪の起訴率や懲役や罰金の相場
脅迫罪で懲役となった事例や量刑判断の基準
脅迫罪で懲役にならないためのポイント

脅迫罪の法定刑は懲役と罰金

先述したとおり、脅迫罪は、人に害悪を告知した際に成立する犯罪です。

脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金です。

(脅迫)

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

引用:刑法第222条 – e-Gov

脅迫罪の起訴率や量刑相場

起訴率は37.5%

政府の統計によると、2021年に脅迫罪で送致された人の起訴率は37.5%でした。

起訴とは、検察が容疑者(被疑者)を刑事裁判で訴えることです。

全体 2,199人
起訴された人 824人
不起訴の人 1,375人

参考:被疑事件の罪名別起訴人員、不起訴人員及び起訴率の累年比較 (1993年~) – e-Stat 政府統計の総合窓口

2021年の刑法全体の起訴率が36.8%であるため、おおよそ同程度かやや多い割合となります。

懲役の平均は1年

司法統計によると、2022年に脅迫罪で起訴された場合の量刑は次のとおりです。

刑期 執行猶予の有無 人数 割合
2年以上 執行猶予 5 3.0%
実刑 3 1.8%
1年以上 執行猶予 59 35.3%
実刑 18 10.8%
1年未満 執行猶予 42 25.1%
実刑 39 23.4%

参考:司法統計 – 裁判所

脅迫罪で、有罪となった場合の懲役は1年が最多でした。

基本的に言い渡された量刑が3年以下の場合は、執行猶予がつくことになります。

全部が執行猶予されると、執行猶予がついた期間中に再び罪を犯さなければ、懲役となり刑務所に収容されることはありません。

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罰金の相場は10~20万円

同様に、脅迫罪で有罪判決となり、罰金が科された場合の金額は次のとおりです。

金額 人数 割合
30万円以上 2 10.5%
20万円以上 8 42.1%
10万円以上 9 47.4%
10万円以下 0 0.0%

参考:司法統計 – 裁判所

脅迫罪で有罪となった場合、約89.7%が懲役刑となり、約10.3%が罰金刑となります。

統計上、罰金の相場はおおよそ10~20万円になるケースが多いです。

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脅迫罪の量刑判断の基準

脅迫罪の量刑の判断基準となる要素は次のとおりです。

  • 脅迫行為の内容、執拗さ、文言
  • 脅し取った金額
  • 脅迫行為の動機
  • 結果の重大性
  • 被害者との関係
  • 被害者との示談の有無や示談の金額 など
  • 脅迫罪の場合、初犯であれば罰金刑になるケースも多いです。

ただし、同種の前科があれば、刑事裁判になることもあります。

被害者と示談が成立しており、被害者が許してくれていること、そして、脅迫が悪質でなければ不起訴処分(刑事裁判にならないこと)になる可能性が高いです。

脅迫罪で罪が重くなるケース

脅迫罪では次のようなケースがあると処分が重くなることも考えられます。

  • 繰り返し脅迫行為をしている
  • 恐喝などの犯罪行為がある

繰り返し脅迫行為をしている

繰り返し脅迫行為をしていると、常習性があるとされ、脅迫罪よりも重い暴力行為法(暴力行為等処罰に関する法律)違反に問われる可能性があります。

常習的な脅迫行為は、3か月以上5年以下の懲役です(暴力行為法第1条の3)。

暴力行為法は本来暴力団など、日常的に犯罪行為を行う人が脅迫行為に及んだ際に適用されてきました。

近年では、有名人を繰り返し脅迫していた元国会議員の男性が暴力法違法違反等で起訴されています。

判決では、男性が動画配信サイトで有名人を繰り返し脅迫しており、多額の利益を得ていたため、職業的とも言え、常習性があるとされました。

参考:「安全圏からの卑劣な中傷」 ガーシー被告に有罪判決 東京地裁|朝日新聞デジタル

恐喝などの犯罪行為がある

脅迫行為以外にも、恐喝などの犯罪行為がある場合、複数の罪に問われる可能性があります。

例えば、Aさんに対する脅迫の他、Bさんに対して恐喝行為をしていた場合です。

裁判で判決が確定していない2つ以上の罪があった場合、次のようなルールに則り、併合罪として言い渡される量刑の幅も大きくなります。

  • 懲役が言い渡される場合、最も重い刑の上限が1.5倍で計算される
  • ただし、それぞれの罪の定めた刑の長期の合計を超える場合は、各罪に定めた刑の長期が上限となる

上記の例で言えば、恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役であるため、それに1.5倍した15年が、量刑の上限として言い渡されることになります。

脅迫罪 2年以下の懲役、または30万円以下の罰金
恐喝罪 10年以下の懲役

ただし、併合罪では、両者の刑期の合計を超えることはできないとされています。

脅迫罪と恐喝罪の刑期の合計は12年ですので、上記のようにこの12年を上回って15年を科すことはできません。

そのため、刑期は脅迫罪の2年と、恐喝罪の10年以下を合わせた12年を上限として量刑が言い渡されることが考えられます。

このように複数の罪に問われると、他の罪の刑期が加算される可能性があります。

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脅迫行為で問われる可能性のある罪

脅迫罪では、脅迫とは別にした行為で他の罪に問われる可能性があります。

ここでは、脅迫行為をした際に問われる可能性のある罪も紹介します。

先述したとおり、脅迫行為以外の罪があれば、その罪も加重されて重い処分が下る可能性があります。

強要罪

強要罪は、脅迫罪同様に、生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対して、害悪の告知を行い脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせる、または人の権利の行使を妨害した場合に成立します(刑法第223条)。

脅迫罪との違いは、脅迫だけでなく、暴力などを用いて、人に義務のないことを負わせたり、人の権利の行使を妨害する点です。

例えば、次のような行為は、強要罪に問われる可能性があります。

  • 土下座で謝罪を要求する
  • 飲酒を強要する など

脅迫だけではなく、実際に暴行等で人に何かを強いるなどすれば、強要罪が成立します。

強要罪の法定刑は3年以上の懲役です。

情状酌量などで刑が軽くならない限りは、最低でも3年以上の懲役が科されて、罰金刑もありません。

懲役の上限は20年となるため、3年以上20年以下の範囲で量刑が言い渡されることになり、脅迫罪よりも重い処分となることが考えられます。

恐喝罪

恐喝罪は、暴行や脅迫などを用いて、被害者を恐怖させて、金品を支払わせた場合に成立します(刑法第249条)。

脅迫罪との違いは、脅迫行為だけでなく、実際に相手に金品を支払わせる点です。

例えば、明日までに100万円を持ってこないと殺すといった内容から、100万円払うならこの写真をネットにばらまかないなども恐喝行為となります。

恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役で、罰金刑はありません。

脅迫罪よりも遥かに重い処分が下されることになります。

威力業務妨害罪

威力業務妨害罪とは、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法第234条)。

威力業務妨害罪の威力とは、相手の自由意思を制圧するに足りる威力だと解されています。

わかりやすく言えば、店舗などにしつこく迷惑電話をしたり、店頭で長時間に渡り執拗にクレームをつけたりして、従業員の業務を妨害したようなケースが挙げられるでしょう。

施設や公官庁などに対して、爆破や殺害予告で脅迫して、業務を妨害するような行為も、威力業務妨害罪に問われることが考えられます。

施設や公官庁などに脅迫行為をすると、威力業務妨害罪が成立し3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

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皆さんも一度や二度、商品や店員の態度等に対してクレームをつけたこと、あるいはそうした行為を目の当たりにしたことはあるのではないでしょうか? 威力業務妨害罪はそうしたクレームや嫌がらせ・迷惑行為などに適用されることが多い罪…

暴力行為等処罰法違反

集団での脅迫や暴行、凶器を出して脅迫を行うと、暴力行為法(暴力行為等処罰に関する法律)違反に問われる可能性があります。

暴力行為法は1926年に施行された古い法律で、ストライキなどの労働運動を始め、学生運動や暴力団関係者を取り締まる法律として機能してきました。

団体や集団の威力を示したり、凶器を示したり、複数人共同して暴行や脅迫をしたり、器物損壊をしたりした場合に、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(暴力行為法第1条)。

先述したとおり、常習的な脅迫行為についても定めており、常習的な脅迫行為の法定刑は3か月以上5年以下の懲役です(暴力行為法第1条の3)。

脅迫罪で実刑になった事例

ここでは、脅迫罪で実刑になった事例を紹介します。

弁護士を脅迫して懲役10か月

トランスジェンダーを公表している弁護士に複数回殺害予告をした被告人に、懲役10か月の実刑判決が言い渡されました。

被告人は、被害者のSNSの主張が自分とは異なることに腹を立てて犯行に及んでおり、犯行は身勝手、9回にわたり命を脅かしており悪質、被害者の恐怖も大きいとして上記の判決が下されています。

参考:「男のクセに女のフリ」「メッタ刺しにして殺害」 トランスジェンダー公表の弁護士を脅迫 無職の39歳男に実刑判決 – ABCニュース

脅迫のはがきを送り懲役1年

特定の人種を差別する内容や爆破予告のはがきを市の施設に送り付け、威力業務妨害罪に問われた被告人に懲役1年の実刑判決が言い渡されています。

元同僚に対する約25年の恨みから、元同僚の名前をかたり脅迫状を送ったとのことです。

裁判では、被告人が反省の弁を述べるも、施設の利用者などの負担や心情に思いを巡らせて振り返っているようには見られないと非難、上記の判決が下されました。

このように施設などに対して脅迫行為をすると、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。

参考:差別はがきの動機は「逆恨み」 元川崎市職員に実刑判決 – 朝日新聞デジタル

漫画家を脅迫し懲役4年6か月

約1年に渡り特定の漫画と漫画家を脅迫し続けた被告人に、懲役4年6か月の実刑判決が言い渡されました。

被告人は、2012年から2013年に渡り、特定の漫画と漫画家をターゲットにし、イベント会場やラジオ局、商品を取り扱う店舗等に数百回に渡り、脅迫状を送りつけました。

こうした脅迫について、各イベントではイベント自体の中止や商品の撤去など、社会に大きな影響を与えました。

裁判では、自身の境遇や独りよがりな歪んだ物の見方から生じた感情を、一方的に向け、漫画家を逆恨みしたとして、実刑判決が下されています。

参考:「黒子のバスケ」脅迫に実刑 東京地裁 懲役4年6月の判決 – 日経新聞

脅迫罪で懲役にならないためには示談が重要

脅迫罪で懲役にならないためには、示談が重要です。

被害者と示談が成立することで、起訴されずに不起訴で済んだり、執行猶予がついたりする可能性が高まります。

ここでは、示談について示談金の相場などを解説します。

脅迫罪の示談金の相場は10~30万円

脅迫罪の示談金の相場は、おおよそ10~30万円と言われています。

示談金には、金銭的な損害だけでなく、精神的な損害に対する賠償も含まれます。

脅迫罪の示談金は、被害者の精神的な苦痛に対する賠償です。

そのため、示談金は被害者の精神的な苦痛によって異なりますし、交渉によって決定されるため、一概に10~30万円程度とは断言できません。

例えば、次のような内容によっても、示談金は異なります。

  • 脅迫の内容や日時、場所や方法
  • 相手の年齢
  • 体格差
  • 加害者と被害者の関係
  • 脅迫の状況 など

特に、脅迫行為が悪質、複数回に渡るなど継続しているなどのケースでは、示談金が高額になるケースがあります。

脅迫罪の示談交渉は弁護士に相談

脅迫罪で被害者に謝罪をして示談をしたい場合は、弁護士に相談しましょう。

脅迫罪では、脅迫された被害者は加害者に対して恐怖や嫌悪感を抱いているケースがほとんどです。

そのため仮に面識があっても、示談交渉に応じてもらえない可能性が高いです。

第三者である弁護士を介することで被害者に対して、真摯に謝罪を行い、粘り強く示談交渉をしてもらうことができます。

まとめ

脅迫罪の起訴率は約30%ほどと他の犯罪と比較しても同じくらいです。

脅迫罪は軽微な犯罪だと思われがちですが、有罪となった場合は約90%近くに懲役が科されているというデータがあります。

繰り返し執拗に脅迫行為をしていれば、常習脅迫などで重い処分が科されるおそれもあります。

脅迫行為が執拗であるなど悪質でなければ、被害者としっかり示談をすることで、不起訴処分になる可能性があります。

脅迫罪に問われたり、逮捕されてしまったりした場合は、被害者としっかり示談をすること、そして脅迫行為をしないことが大切です。

もしご家族が脅迫罪で逮捕されたような場合は、刑事事件の実績があるネクスパート法律事務所にご相談ください。

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