更新日:2025年3月21日 (金)

公開日:2024年5月30日 (木)

傷害罪の懲役や量刑の相場|初犯の場合は?執行猶予はつかない?

傷害罪の懲役や量刑の相場|初犯の場合は?執行猶予はつかない? 傷害罪の懲役や量刑の相場|初犯の場合は?執行猶予はつかない?

サマリー

暴行の末に、人にケガをさせると傷害罪が成立します。

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法第204条)。

初犯であれば、被害者に謝罪と示談を申し入れ、弁護士のサポートを受けることで、実刑判決を回避できる可能性があります。

この記事では、傷害罪の量刑に関して、統計などを用いて次の点を解説します。

・傷害罪の懲役や量刑の相場
・傷害罪の初犯の量刑や釈放の有無
・傷害罪の量刑が重くなるケース
・傷害罪で懲役にならないためにできること
人にケガをさせてしまった、捜査が行われている、もしくは家族が逮捕されてしまったという人は、迷わず弁護士に相談してください。

傷害罪は懲役になる?

ここでは、傷害罪の懲役になる割合、量刑の相場について解説します。

傷害罪で懲役になる割合

傷害罪は、罰金以外に懲役も科される重い犯罪です。

司法統計によると2022年に傷害罪で懲役になった割合は次のとおりでした。

懲役 82%(1,796人)
罰金 15%(341人)

※他無罪など
参考:司法統計

傷害罪の場合はおおよそ8割に懲役の判決が下されています。

傷害罪の懲役の相場

司法統計によると、2020年に傷害罪で懲役が科せられた場合の量刑は次のとおりでした。

15年以下 10人 0.5%
10年以下 18人 1%
7年以下 33人 1.8%
5年以下 67人 3.7%
3年 98人(うち実刑20) 5.4%
2年以上 397人(うち実刑115) 22%
1年以上 806人(うち実刑216) 44%
1年未満 367人(うち実刑206) 20%

傷害罪の量刑は、各事件の内容や、被害者の容態などさまざまな事情を考慮して決定しますが、実務上はある程度の量刑相場があります。

例:

  • 父親が生後3か月の子どもに全治不能の脳軟化症を負わせた事件→懲役2年10か月(静岡地裁沼津支部令和元年11月28日判決)
  • 父親が生後1か月の子どもに暴行を加えて、脳出血、眼底出血、重度脳浮腫、急性呼吸不全、高度脳神経障害などの障害を負わせた事件→懲役3年(鹿児島地裁平成31年1月31日判決)
  • 母親が1歳の子どもに暴行を加え、急性硬膜下血腫などの障害を負わせた事件→懲役5年6か月(横浜地裁令和元年12月3日判決)

後遺症を負うほどの暴行であれば、一般的な感覚なら量刑はもっと重いのではと感じる人もいるでしょう。

実務上では、過去の判例なども参考にして量刑が決定されるため、ある程度の相場が決められているのです。

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傷害罪の初犯は懲役にならない?

傷害罪の初犯なら懲役にならないのでは?すぐに釈放されるのでは?と思っている人もいるのではないでしょうか。

傷害罪は初犯であっても、事件の内容や被害者のケガの程度、示談の有無など事情によっては懲役になる可能性があります。

軽微な事件で、示談が成立し、反省をしているような場合は、不起訴や執行猶予がつくことも考えられるでしょう。

ここでは、量刑が決まる基準などについて解説します。

傷害罪の量刑が決まる基準

傷害罪の量刑が決まる基準は、これと法律で決められているわけではありません。

事件の内容などのさまざまな事情を考慮した上で、裁判官によって判断が下されます。

傷害罪の量刑を決めるうえで考慮される事情は次のとおりです。

  • 暴行の内容(凶器の使用の有無、使用回数、単独か複数か)
  • 犯行の動機、計画性
  • 結果の重大性、被害者のケガの程度(治療期間や後遺症の有無)
  • 被害者の性別や年齢、被害者との関係性
  • 被害者の処罰感情
  • 被害の弁償や示談の有無
  • 自首の有無、反省の程度
  • 前科前歴の有無
  • 過去の判例 など

被害者のケガの程度や、反省していない、示談もしていないなどの状況があれば、初犯でも重い処分が下されることもあります。

傷害罪の初犯でもすぐ釈放されない可能性がある

傷害罪の初犯ならすぐに釈放されると思っている人もいますが、すぐに釈放されないケースもあります。

確かに、比較的軽微な事件であれば身柄拘束(勾留)されないケースもあります。

しかし、次の要件を満たした場合は、勾留される可能性があります。

  • 容疑者(被疑者)が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある
  • 被疑者が住所不定である
  • 被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがある

参考:刑事訴訟法第60条

住所不定や証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されれば、初犯でも勾留されることもあります。

一度勾留されてしまうと、10~20日間警察の留置場に身柄を拘束されることが考えられます。

法務省によると、2022年に傷害罪で検挙された人のうち、逮捕された割合は50.2%、そのうち勾留が認められたのは94.9%です。

逮捕されてしまうと、高確率で勾留がセットになる可能性があります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第3節 被疑者の逮捕と勾留 – 法務省

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傷害罪は執行猶予がつかない?

傷害罪であっても、条件を満たせば執行猶予がつく可能性があります。

執行猶予がつく条件の1つは、言い渡された量刑が3年以下の懲役や禁固、または50万円以下の罰金であること。

そして、次のいずれかの条件を満たした場合です。

  • 前に禁固以上の刑に処されたことがない
  • 前に禁固以上の刑に処されたが、服役や執行猶予から5年以上経過している
  • 前に禁固以上の刑に処されたが、その刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役や禁固を言い渡されたとき

参考:刑法第25条 – e-Gov

先述した統計によると、2020年に傷害罪で執行猶予がついたケースは次のとおりです。

3年 全部執行猶予 78人
実刑 20人
2年以上 全部執行猶予 281人
実刑 115人
1年以上 全部執行猶予 588人
実刑 216人
1年未満 全部執行猶予 164人
実刑 206人
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傷害罪で量刑が重くなるケース

傷害罪の場合は、被害者に謝罪をして示談をすることで処分が軽くなるケースが多いです。

一方で、被害者と示談をしなければ、刑事裁判になり有罪判決を受けることもあり得ます。

他にも傷害罪で量刑が重くなるケースを解説します。

複数の罪を犯した(併合罪)

複数の罪を犯した場合、最も重い刑の長期に2分の1を加えて量刑が計算されることになります。

(併合罪)
第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
引用:刑法第45条 – e-Gov

例えば、友人Aを路上で殴りケガをさせ、友人Bを公園で殴りケガをさせたケースが挙げられます。

友人AとBへの傷害行為はそれぞれ別の犯罪です。

両方で起訴された場合は、傷害罪の最長15年に半分となる7年6か月を加えた22年6か月を上限として、量刑が決定することになります。

懲役刑の上限は20年までですが、複数の罪について併合罪の加重となると、上限は30年となります(刑法第14条)。

執行猶予中に再犯をした

もし別の犯罪ですでに執行猶予がついており、その執行猶予中に傷害罪で有罪判決となった場合も、前回の処分が合算されることになります。

例えば、傷害事件で懲役5年、執行猶予3年が言い渡された場合を考えます。

傷害事件で上記の量刑を言い渡されてから3年以内(執行猶予期間中)に再度傷害罪で懲役2年の実刑判決を受けた場合、執行猶予は取り消されることになります。

そして、前回言い渡された5年に2年が合算された7年間、刑務所に収容される可能性があります。

出所したが再犯をした

服役後5年以内に、再度罪を犯して懲役が科された再犯の場合も、重い処分が下される可能性があります。

再犯と聞くと、再度罪を犯すことですが、法律上では明確に定義づけされています。

懲役に処された者が、刑の執行が終わった日、またはその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯し、有期懲役に処するとき
参考:刑法第56条 – e-Gov

まとめると次のとおりです。

  • 懲役に処されて刑務所に服役していた
  • 出所から5年以内に新たに罪を犯した
  • 新たに犯した罪で懲役の実刑判決が下された

出所から5年以内に傷害罪で実刑判決を受けると、再犯となります。

再犯は、法定刑の2倍を上限として量刑が計算されることになります。

再犯の傷害罪で有罪となった場合、傷害罪の最長15の2倍、つまり30年を上限として、量刑が決定します。

再犯だからといって、必ず懲役30年が科されるわけではありませんが、15~30年を上限として、量刑が決定されるということです。

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傷害行為に関係する罪

暴行の末に、相手にケガをさせると傷害罪が成立します。

しかし、傷害行為が伴う犯罪では、別の罪が成立するケースもあり、傷害罪よりも重い処分が下される可能性があります。

傷害致死罪

暴行を加えた末に、被害者がケガをするだけでなく、死に至らしめた場合は、傷害致死罪が成立します。

傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役なので、3~20年の範囲で量刑が決定することになります(刑法第205条)。

傷害致死罪は懲役しか設定されていない、重い犯罪です。

司法統計によると、裁判員裁判で裁かれた傷害致死事件の量刑は次のとおりです。

15年以下 10人 12%
10年以下 16人 20%
7年以下 27人 34%
5年以下 17人 21%
3年 6人(うち実刑1) 7.6%

※他減軽されて2年など
参考:司法統計

2021年にはホームレスを襲撃した元少年2人に懲役5年と懲役4年がそれぞれ言い渡されています。

参考:ホームレス襲撃死、元少年2人に実刑判決 傷害致死の罪 – 朝日新聞デジタル

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強盗傷人罪

物を盗む目的で人をケガさせた場合は、強盗傷人が成立する可能性があります。

強盗傷人罪の法定刑は、無期懲役または6年以上の有期懲役です(刑法第240条)。

最低でも6年の懲役となるため、自首などの情状酌量がない限り執行猶予はつきません。

2023年の10月にも、自宅に押し入り夫婦にケガをさせて、現金や車などを奪った被告人3人に、それぞれ懲役10年から4年6か月の実刑判決が下されています。

参考:長洲町の強盗傷害 2審も被告に懲役10年の判決 福岡高裁 – NHK

殺人未遂罪

殺意を持ち、相手に危害を加えると、殺人未遂に問われるおそれがあります。

殺人未遂罪の法定刑は、刑法に明確に定められていないため、殺人罪と同等の処分、もしくはやや減軽された量刑が下されると解釈されています。

殺人罪の法定刑は、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役です(刑法第199条)。

やや古い資料ですが、最高裁によると2008年から2011年で殺人未遂事件で下された判決は次のとおりでした。

殺人未遂罪の量刑分布引用:特別資料1(量刑分布)

2024年4月には、母親の胸などを包丁で複数回突き刺しケガを負わせた息子に懲役5年6か月の実刑判決が下されています。

参考:宮古島市の民家で母親を刺す 殺人未遂の罪で被告の息子に実刑判決 那覇地裁 沖縄 – 琉球新報

傷害罪は、結果的に相手が死亡しなかったために成立しているに過ぎません。

傷害罪で実刑判決が下された事例

傷害罪の懲役の相場で解説したとおり、量刑は過去の判例も考慮して決定されます。

実務上は、後遺症を負っても執行猶予がつく場合もあります。一方で、実刑判決が下されるケースもあります。

2017年には1歳の息子を床に投げつけて、意識不明の重体にし、脳に重篤な障害を負わせた父親に、懲役5年判決が言い渡されました。

参考:1歳次男を投げつけ意識不明 父親に傷害罪で懲役5年 神戸地裁支部判決 – 産経新聞

傷害罪で懲役を回避するには

傷害罪は、被害者の容態や、犯行の内容、反省の有無、示談の有無によっては、重い処分が下される可能性があります。

傷害罪で少しでも処分を軽くするにはどうするべきなのでしょうか?

被害者と示談をする

傷害事件で最も重要なのは、被害者と示談をすることです。

刑事事件では、被害者と示談をすることで、謝罪を行い、被害回復に努めたと評価されます。

また、示談に応じた被害者の処罰感情もなくなり、双方で和解したと判断されるため、有利な事情として働きます。

傷害罪の場合は、被害者と示談が成立することで、そもそも不起訴処分になるケースも多くあります。

ただし、被害者からすれば、加害者と接触したり、示談に応じたりしたくないと考えるのが自然です。

そのため、被害者との示談は弁護士に依頼してください。粘り強く交渉してくれる可能性があります。

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逮捕前なら自首する

逮捕前なら自首や出頭することで、刑が減軽される可能性があります。

(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
引用:刑法第42条 – e-Gov

自首をすることで、次のようなメリットもあります。

  • 逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断され、逮捕を回避できる
  • 長期の身柄拘束の回避
  • 家族や勤務先に知られずに済む など

弁護士に相談することで、自首に同行してもらえ、逮捕が回避できる確率も高まるでしょう。

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具体的な再犯防止策を示す

傷害事件では示談が必須と言えますが、他にも具体的な再犯防止策を示し、実行することが大切です。

例えば、飲酒をすると暴力行為を働きやすいなど明確な原因があるのなら、次のような対策を行うことが大切です。

  • 飲酒を減らす
  • 家族に監督をしてもらう
  • 必要に応じてアルコール依存症の治療を行う など

刑事事件の実績が豊富な弁護士であれば、今までの経験から、具体的な再犯防止策を提案してくれます。

検察や裁判官に訴えてもらうこともできるでしょう。

まとめ

傷害罪は、初犯でも、犯行の内容や被害者のケガの状況、反省の有無などによっては、懲役などの重い処分が下される可能性があります。

被害者が亡くなるなどすれば、更に重い罪に問われるおそれもあります。

被害者としっかり示談をすることで、不起訴処分となり、刑事裁判にならずに済むケースも多いです。

人にケガをさせてしまったり、家族が逮捕されたりした場合は、弁護士に相談してください。

まずは被害者に謝罪をして、少しでも処分が軽くなるようサポートしてもらいましょう。

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