更新日:2026年4月22日 (水)

公開日:2020年11月29日 (日)

刑事裁判とは|民事裁判との違いや裁判の目的

刑事裁判とは|民事裁判との違いや裁判の目的 刑事裁判とは|民事裁判との違いや裁判の目的

サマリー

裁判には大きく刑事裁判と民事裁判があります。

両者はどの点でどう違うのでしょうか?以下で詳しく解説してまいります。

刑事裁判とは

刑事裁判とは、罪に問われた人(被告人)が有罪か無罪か、有罪であるとしていかなる量刑(懲役●年、罰金●万円、、、実刑か執行猶予かなど)が適当かを決めるための裁判です。

刑事裁判は、死刑、懲役、禁錮、罰金などあらゆる刑罰を言い渡すことができる正式裁判と100万円以下の罰金又は科料(千円以上一万円未満)の命令しか出せない略式裁判の2種類があります。

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刑事裁判の登場人物

刑事裁判には以下の通り、さまざまな人が参加します。

被告人 検察に訴えられて、刑事裁判で判断が下される人
裁判官 裁判によって異なるが、裁判官3人の合議で審理する場合もあれば、裁判官一人で審理する場合もある
裁判所書記官 裁判記録を作成する人
検察官 犯罪を立証し、どの程度の罰が適当か裁判官に訴える人
弁護人 被疑者の権利を守り、法的助言を行うために裁判に立ち会う人
被害者 一部の重大事件では、被害者が裁判に出席、意見を述べたり、被告人に質問したりできる
裁判員 裁判員裁判では国民から選ばれた6人の裁判員が評議を行う
証人 検察官や弁護人が必要に応じて出席をお願いする証人
被害者や目撃者、鑑定人、被告人の家族などが該当する
傍聴人 公開で審理されている刑事裁判は誰でも傍聴可能

刑事裁判が行われる裁判所

日本の裁判は、正しい裁判を実現するために、三審制度を設けています。

そのため、最初の裁判(第一審)に不服があれば、2回までは異議申し立てが可能です。

そして、異議申し立てごとに、審理が行われる裁判所が異なります。

三審制引用:「裁判所」の仕事を見に行こう! 公平な裁判を通じて国民の権利と自由を守ります。 – 政府広報オンライン

裁判 裁判所
①第一審 第一審(初公判)は事件のあった地域を管轄とする地方裁判所、もしくは簡易裁判所で行われる
不服がある場合は、被告人、検察共に高等裁判所に控訴できる
②第二審 第二審(控訴審)は高等裁判所で行われる
不服がある場合は、最高裁判所に上告できる
判決には、第一審を支持する棄却、第一審に再度審理させる差し戻し、控訴審が判断する自判などがある
③第三審 第三審(上告審)は最高裁判所で行われる
控訴審を破棄して自ら判断する破棄自判や、再度審理させる破棄差し戻しなどがある

刑事裁判にかかる期間

刑事裁判にかかる期間は、その裁判が裁判員裁判なのか、そうでないのか、被告人が罪を認めているのか、認めていないのかなどにもよります。

2023年の司法統計によると、刑事裁判にかかった平均審理期間と平均開廷回数は以下の通りです。

通常第一審(地方裁判所) 裁判員裁判
平均審理期間 自白事件 3.2か月 10.2か月
否認事件 11.4か月 15.7か月
平均開廷回数 自白事件 2.4回 4.2回
否認事件 6.6回 6.2回

参考:司法統計 第19表 審級別平均審理期間及び通常第一審事件の平均開廷回数 – 裁判所

被告人が否認している事件や、殺人などの重大事件を取り扱う裁判員裁判はどうしても審理が慎重に行われ、立証すべきものが多岐にわたるため、時間がかかります。

一般的な事件であれば、起訴から1か月~1か月半後に初公判が行われ、起訴から2~3か月ほどで判決が言い渡されます。

民事裁判とは

民事裁判とは、貸したお金を返して欲しい場合の借主に対する貸金返還請求権、交通事故の怪我をした・死亡した場合、不貞行為によって精神的苦痛を負った場合に賠償金の支払いを求める損害賠償請求権など、私たち(私人(法人も含む))に認められている法律上の権利を実現するための裁判です。

民事裁判は大きくわけて、上記の貸金返還、損害賠償などの私人間の紛争を取り扱う通常訴訟、手形・小切手金の支払いを求めることができる手形小切手訴訟、簡易迅速な手続により60万円以下の金銭の支払いを求めることができる少額訴訟があります。

刑事裁判と民事裁判の違い

刑事裁判と民事裁判の概要を把握していただいた上で、以下では両者の違いを細かく解説してまいります。

訴える人、訴えられる人(裁判の当事者)

刑事裁判訴える人(起訴する人)は一部の例外的な場合を除き検察官です。つまり、私人に訴える権限はありません。

また、訴えられる人は捜査機関により捜査を受け罪に問われている人、つまり被疑者です

被疑者は起訴されると被告人と呼ばれるようになります。

他方で、民事裁判は私人間の紛争を解決するための裁判ですから、訴える人も訴えられる人も私人です。

刑事裁判では検察官VS被告人(弁護人)民事裁判では私人VS私人という構図となります。

手続きに適用される法律の内容

刑事裁判は主に刑事訴訟法(及びその規則)に定められている規定に従って手続きが進められていきます。

他方で、民事裁判は主に民事訴訟法(及びその規則)に定められている規定に従って手続きが進められていきます。

その他、刑事裁判では被告人がどんな罪に問われているか、民事裁判ではどんな権利を実現したいかなどによって適用される法律が違います(刑事裁判では主に刑法、民事裁判では民法が適用されることが多いです)。

裁判の目的

刑事裁判は、検察官が死刑、懲役、禁錮、罰金などの刑罰権を実現するために行わるものです。

刑事裁判で、裁判官から懲役〇年(実刑)という判決が言い渡され、不服申し立て期間(2週間)を経ると刑事裁判が確定し、国民を刑務所に服役させること(懲役、禁錮の場合)などが可能となります。

他方で、民事裁判は、私人の権利実現のために行われるものです。

民事裁判が確定すると、損害賠償請求権の内容が確定し(損害賠償請求権の実現を目的とした場合)、仮に相手方が賠償金を支払わない場合は、相手方の財産を差押えることが可能となります。

裁判の手続き、制度

刑事裁判では、起訴権限がある検察官が起訴状という書面を裁判所に提出することで刑事裁判が始まります。

刑事裁判では、検察官の起訴状朗読等の冒頭手続から始まり、検察官や弁護人が証明しようとする事実に関する証拠(書証、物証、人証(※))を裁判所に提出するなどして判決へと至ります。

※書証、物証、人証
書証は書面による証拠、物証は物的証拠による証拠、人証は法廷における尋問による証拠のこと。

民事裁判でも、訴える人が訴状という書面を裁判所に提出して民事裁判が始まるという点、証明しようとする事実に関する証拠を裁判所へ提出するなどする点は刑事裁判と同じです。

しかし、刑事裁判と民事裁判は大きく次の3点で異なります。

裁判の途中で裁判を終わらせることができるか否か

民事裁判では、裁判の途中で原告自らが裁判を終わらせることができる訴えの取下げ請求の放棄、被告自らが裁判を終わらせることができる請求の認諾の手段を取ることが認められています

民事裁判では、私人間の紛争については、基本的に私人間の自主的解決に委ねるという私的自治の原則が妥当するからです。

なお、請求の放棄とは、原告が自らの請求に理由がないことを認め裁判を終わらせること、請求の認諾とは、被告が原告の請求に理由があることを認め裁判を終わらせることをいいます。

他方で、刑事裁判では私的自治の原則が妥当しません

刑事裁判にも起訴を取り消す制度はありますが、検察官は自身の都合だけで起訴を取り消すことはできません

また、被告人が起訴された罪を認めているからといって、刑事裁判の途中で裁判を終わらせることもできません

つまり、刑事裁判の手続きは必ず判決で終結します。

立証の程度

刑事裁判では、疑わしきは被告人の利益にという言葉があるように、被告人に無罪推定の原則が働きます。

そのため、立証責任(挙証責任ともいいます)を負う検察官が、被告人が犯人であることなど被告人を有罪とするために必要な要件につき合理的な疑いを差し挟む余地がない程度にまで立証しなければなりません。

つまり、裁判所が少しでも疑いを差し挟む余地があった場合、被告人は無罪とされるということです。

前述のとおり、刑事裁判の最終目標は被告人に刑罰を科すことにあるところ、刑罰は重大な人権侵害をもたらすことから、その分、刑罰について責任を持つ検察官の立証のハードルを高くしたのです。

他方で、民事裁判では、刑事裁判ほど立証のハードルは高くありません

そのため、たとえば、名誉棄損罪で起訴された方が刑事裁判で無罪となったとしても、民事裁判における損害賠償請求訴訟では損害賠償金の支払いを命じられるなどということは珍しくありません。

和解の有無

民事裁判では和解の制度があります。民事裁判では前述した私的自治の原則が妥当するからです。

他方で、刑事裁判では和解の制度はありません。もっとも、刑事裁判でも、2018年(平成30年)6月1日から司法取引制度(※)が導入されています。

※司法取引
捜査機関に協力した見返りに、検察官が協力した人を不起訴としたり、裁判での求刑を軽くするもの。書面による弁護人の同意が必要。

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刑事裁判の種類

刑事裁判は、検察がどのように起訴したのかによって、裁判の形式が異なります。

ここまで紹介してきた、ニュースで見るような公開の裁判は、正式裁判と呼ばれるものです。

他にも、刑事裁判には以下の種類があります。

正式起訴(公判請求) 正式裁判
裁判員裁判
即決裁判手続き 即決裁判
略式起訴(略式命令請求) 略式裁判

それぞれについてわかりやすく解説します。

正式裁判

正式裁判とは、これまで解説してきたように、地方裁判所で行われる刑事裁判のことです。

検察官に正式起訴された場合は、通常の刑事裁判が行われます。

裁判員裁判

裁判員裁判とは、国民の中から選ばれた裁判員が、地方裁判所で行われる刑事裁判に参加する制度です。

国民が裁判に参加することで、裁判に国民の感覚を反映させ、国民が裁判に関心を持つことが期待され、2009年から開始されました。

裁判員は、18歳以上の国民の中から6名がくじで選ばれます。候補者には質問表などが郵送され、辞退の有無を希望できます。

裁判員裁判の対象事件となるのは、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物放火罪(人のいる建物への放火)、危険運転致死罪などです。

参考:もし、あなたが裁判員に選ばれたら?裁判ではどんなことをするか知っていますか? – 政府広報オンライン

即決裁判

即決裁判とは、通常の刑事裁判と比較して、手続きが迅速に進められ、原則その日に判決が言い渡される裁判のことです(刑事訴訟法第350条の16)。

以下の条件を満たした場合に行われます。

  • 死刑または無期懲役、もしくは1年以上の懲役、もしくは禁錮に当たる事件以外
  • 犯罪事実が明白であり、犯罪が軽微で執行猶予や罰金が見込まれる事案
  • 裁判の手続きが速やかに終わる見込みがある
  • 被疑者と弁護人が即決裁判に同意している
  • 弁護人が裁判に出席すること

即決裁判には、手続きが早く、必ず執行猶予がつくメリットがある一方、控訴ができません。

通常の裁判と比較すると以下のような違いがあります。

即決裁判 正式裁判
起訴から裁判までの期間 2週間以内 1か月~1か月半
判決が言い渡される日 原則裁判の日 最初の裁判から2~3か月後
審理を行う裁判所 地方裁判所・簡易裁判所 地方裁判所
被疑者・弁護人の同意 必要 不要
執行猶予の有無 懲役刑や禁錮刑では必ず執行猶予がつく 事案による
控訴の有無 控訴できない 控訴できる

なお、2023年に起訴されて裁判をした人約4万6,000人のうち、即決裁判で判決が下された人は18人しかいません。ほとんど利用されていないのが実情です。

参考:司法統計 第50表 通常第一審事件の終局総人員―罪名別即決裁判手続の実施状況別―全地方裁判所 – 裁判所

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略式裁判

略式裁判とは、正式な裁判を行わず、検察が提出した書面のみで裁判官が罰金刑を決める手続きのことです(刑事訴訟法461条)。

裁判と呼ばれていますが、正式な裁判は行われません。略式裁判となる条件は以下の通りです。

  • 簡易裁判所の管轄する事件
  • 100万円以下の罰金または科料に相当する事件
  • 被疑者が略式裁判に同意している

略式裁判も、起訴から2週間から1か月ほどで罰金刑が科されるため、手続きが早く、裁判に出席する手間はかかりません。

正式裁判と比較すると以下のような違いがあります。

略式裁判 通常裁判
審理を行う裁判所 簡易裁判所 地方裁判所
被疑者の同意 必要 不要
裁判への出廷 不要 必要
刑罰 100万円以下の罰金・科料のみ 制限なし

法務省によると、2022年に略式裁判となった割合は69.7%、正式裁判は30.3%でした。

参考:令和5年版 犯罪白書 第2編 第2章 検察 第4節 被疑事件の処理 – 法務省

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刑事裁判の流れ

刑事裁判の流れは、大きく分けると以下の通りです。

刑事裁判の流れ引用:刑事事件 – 裁判所

冒頭手続き 事件の確認
証拠調べ手続き 検察が犯罪の立証をする
弁論手続き 弁護人の反論
判決の宣告 裁判官が判断を下す

冒頭手続き

冒頭手続きでは、誤って別人を裁いてしまうことがないように、被告人や事件に関して以下の確認や告知が行われます。

人定質問 裁判官が被告人に対して起訴された人物であるか本人確認を行う
起訴状朗読 起訴状にある犯罪行為を読み上げ、審理の対象を明らかにする
黙秘権の告知 裁判官から被告人に対して黙秘権を告知する
罪状認否 裁判官が起訴事実に誤りがないかどうか被告人と弁護人に確認する

証拠調べ

証拠調べでは、検察官が立証を行い、このような犯罪が行われたと裁判官に訴えます。

冒頭陳述 検察官が証拠を示して、犯罪の事実を立証する
検察官の立証 検察官が証拠を提示して、被告人側の意見を確認する
弁護人の立証 弁護人は検察官の立証に対して証拠を提示して反論する
証人尋問 必要に応じて証人尋問が行われる 

証言してくれる証人に対して、弁護人と検察からそれぞれ質問をする

被告人質問 弁護人、検察、裁判官から被告人に質問をする

弁論手続き

弁論手続きは、検察官が適切だと思う刑罰を求刑し、弁護人が適切だと思う刑罰を述べ、最後に被告人が意見を述べます。

検察官の論告・求刑 検察官が適用する法律、適切だと思う量刑について意見を述べる
弁護人の弁論 弁護人が事実関係や適用する法律、量刑に関する意見を述べる
被告人の最終陳述 最後に被告人が意見を述べる
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判決

これまでの審理を踏まえて、裁判官が被告人に対して、有罪か無罪か、有罪なのであればどの程度の量刑なのかを言い渡します。

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控訴

第一審の判決に納得がいかなければ、被告人、検察、どちらからでも不服申し立て(控訴)が可能です。

控訴できる期限は、判決があった翌日から14日間です。

なお、被告人が控訴しても、不利益変更禁止の原則があるため、第一審よりも重い処分が下されることはありません。

これは、控訴によってさらに重い処分が科されることをおそれて、被告人が不服申し立てできなくなる状況を防ぐために設けられた原則です。

刑事裁判は弁護士なしでできる?

刑事裁判に出席する際、弁護士費用が負担できないから、弁護士なしで出席はできないのかと考える人もいるでしょう。

しかし、弁護士費用が負担できなくても、逮捕された場合や在宅起訴された場合は、国選弁護人を選任してもらうことができます。

弁護士を選任してもらうかどうかも被疑者の自由ですが、以下の場合は、弁護士をつけなければ裁判ができません(必要的弁護事件)。

  • 死刑、無期懲役、3年を超える懲役や禁錮がある事件
  • 公判前整理手続き、期日間整理手続きを行う場合、これらの手続きに付された事件
  • 即決裁判手続きにかかる公判期日を開く場合

上記に該当しなければ、弁護士を選任せずに裁判をするケースもあります。

しかし、弁護士がついていない場合、裁判所は職権で国選弁護人を選任できるとされています(刑事訴訟法第35条、36条)。

日本弁護士連合会の弁護士白書によると、2022年の刑事裁判で国選・私選いずれかの弁護士がついた割合は96.5%とほとんどに弁護士が選任されています。

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まとめ

以上のとおり、刑事裁判と民事裁判は主に訴える人、訴えられる人(裁判の当事者)、手続きに適用される法律の内容、裁判の目的、裁判の手続き、制度(立証の程度、和解の有無等)で違いがあるといえます。

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