更新日:2026年3月4日 (水)

公開日:2021年12月6日 (月)

離婚時の財産分与に関して生じるあらゆる疑問点をまとめて解説

離婚時の財産分与に関して生じるあらゆる疑問点をまとめて解説 離婚時の財産分与に関して生じるあらゆる疑問点をまとめて解説

サマリー

離婚する際に行う財産分与について、さまざまな疑問を持たれる方がいらっしゃると思います。

この記事では、財産分与に関するあらゆる疑問点をまとめて解説します。

財産分与とは何か?

財産分与とは、離婚をした者の一方が、他方に対して、婚姻期間中に共同で築いた財産を分けるように請求できる制度です。

財産分与をしなければ離婚ができないか?

財産分与をしなければ離婚ができないわけではありません。

離婚時に夫婦が互いに財産分与を請求しないことで合意すれば、分与は不要です。話し合いをしなかった場合は、一定期間内なら離婚後でも財産分与を請求できます。

財産分与をしなくても離婚は可能

財産分与についての取り決めをしなくても、離婚はできます。

離婚を急ぐ理由がある場合や相手に借金がある場合などには、財産分与をしないケースがあります。

財産分与請求権を放棄する場合は、離婚後のトラブル防止のため、離婚協議書等の書面に明記することが望ましいです。
ただし、財産分与請求権を放棄すると、原則として撤回できません。

早く離婚をしたいために財産分与を請求しなかったものの、離婚後に相手が思っていた以上に財産を持っていたとわかる場合があります。

後悔しないように、相手の財産状況をよく調べた上で、財産分与を放棄するかどうか判断することが大切です。

離婚のみ先行してあとから財産分与請求も可能

離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合は、離婚後でも一定期間内であれば財産分与を請求できます。

財産分与請求権の時効については、7章で詳述します。

財産分与の種類は?

財産分与には、以下のような種類(性質)があります。

  • 清算的財産分与:夫婦が共同で築いた財産を公平に分けること
  • 扶養的財産分与:離婚後の生活保障をすること
  • 慰謝料的財産分与:離婚原因を作ったことへの損害賠償の性質があること

清算的財産分与

清算的財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を経済的な貢献度や寄与度に応じて公平に分けることです。

夫婦の共有財産を清算するものであり、財産分与の中心的なものです。

扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚によって一方の配偶者の生活が困窮する場合に、他方の配偶者が一定期間または一定額の金銭を支払う、扶養料的な要素を持つ財産分与のことです。

夫婦の一方が病気や高齢、乳幼児の監護のために就労が困難な場合などに、扶養的財産分与が認められることがあります。

ただし、扶養的財産分与は、実務上、あくまで補充的なものとして考えられています。

そのため、清算的財産分与と慰謝料的財産分与によっても離婚後の生活に困窮する場合で、かつ、支払う側に扶養能力がある場合に、例外的に認められるものと解されています。

慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、夫婦の一方が他方に慰謝料を支払う義務がある場合に、その分を考慮して行う財産分与です。

慰謝料と財産分与は性質が異なるため、本来は別々に算定して請求するのが原則です。

しかし、紛争を一度で解決することを目的として、財産分与に慰謝料の要素を含めて解決することもあります。

財産分与の対象となるものは?

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産です。

財産分与の対象となる財産の例は、以下のとおりです。

  • マイホームなどの不動産
  • 預貯金・株
  • 車・宝石などの動産
  • 退職金
  • 私的年金
  • 生命保険
  • 子どもの学資保険
  • 借金

マイホームなどの不動産

婚姻期間中に夫婦が協力して得た収入や資産で購入した不動産は、財産分与の対象です。

これには、マイホーム(一戸建て、マンション)、別荘、投資用物件、土地などが含まれます。

不動産の種類や名義に関わらず、婚姻期間中に夫婦が共に築いた資産として、財産分与の対象となります。

婚姻前に夫婦の一方が取得した不動産でも、婚姻後に夫婦が協力して得た収入でローンを返済していた場合は、ローン返済により資産形成した割合部分が財産分与の対象となります。

不動産の財産分与については、「離婚時の家の財産分与で確認すべきことは?手続きの流れを解説」で詳しく解説しています。

預貯金・株

婚姻期間中に夫婦が協力して得た預貯金や株は財産分与の対象です。

夫婦の一方の名義でも、婚姻期間中に夫婦が協力して得た預貯金や株式であれば、原則として財産分与の対象となります。

財産分与おける預貯金の取り扱いについては、「財産分与の対象となる預貯金は?注意を要する3つのケースについて解説」で詳しく解説しています。

車・宝石などの動産

婚姻期間中に得た車や宝石などの動産は、財産分与の対象です。

婚姻前に夫婦の一方がローンを組んで購入した車でも、婚姻後に夫婦の共有財産からローンを返済していた場合は、財産分与の対象になることがあります。

車の財産分与については、「車を財産分与する方法は?ローンを組んでいる場合など注意点も解説」で詳しく解説しています。

退職金

給与の後払い的性質を持つ退職金は、原則として財産分与の対象となります。

退職金が労働の対価的側面を持つ場合は、配偶者の家事労働等の協力を得て勤務を継続できたからこそ獲得できるものと考えられるからです。

財産分与における退職金の取り扱いについては、「退職金は財産分与の対象になる?期間や計算方法とは?」で詳しく解説しています。

私的年金

公的年金の上乗せの給付を保障する私的年金は、財産分与の対象となる場合があります。

私的年金の主な種類には、企業年金(確定給付企業年金、確定拠出年金)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、民間の個人年金保険などがあります。

婚姻期間中の収入でこれらの年金保険料を支払っており、受給が確実で、受給額も明確な場合には、財産分与の対象になる場合があります。

なお、公的年金(厚生年金)は、別途年金分割請求(合意分割制度・3号分割制度)をして分割します。

生命保険

死亡保険や損害保険などの生命保険は、婚姻期間中の収入で保険料を支払っていれば、財産分与の対象となります。

多くの場合、解約返戻金を2分の1ずつ分ける方法をとります。

ただし、以下の保険は、財産分与の対象となりません。

  • 解約返戻金がない掛け捨ての生命保険
  • 婚姻前に加入し、婚姻後も保険料を特有財産から支払っていた保険
  • 親がかけている保険で保険料も親が支払っている保険
  • 住宅ローンを組む際に加入した団体信用保険

対象となる生命保険の詳細や財産分与の方法は、「生命保険は財産分与の対象になる場合とならない場合がある!」で詳しく解説しています。

子どもの学資保険

子どもの学資保険料を婚姻期間中に夫婦の収入から支払っている場合、その学資保険は財産分与の対象となります。

ただし、以下に該当する場合は、財産分与の対象となりません。

  • 保険料を支払っていたのが夫婦以外(例えば祖父母)だった場合
  • 夫婦の一方の特有財産から保険料を支払っていた場合

借金などの債務

婚姻生活上で生じた借金などの債務は、財産分与の対象となります。

例えば、以下のような債務です。

  • 住宅ローン
  • 子どもの学費ローン
  • 家族で使うための車のローン
  • 生活費を補填するためにした借金

夫婦の一方がギャンブルで作った借金など、夫婦共同生活とは関係のない個人的な借金は、財産分与の対象になりません。事業の運転資金として借り入れた債務も、原則として財産分与の対象となりません。

借金の財産分与については、「借金も財産分与の対象になる?財産分与における負債の取り扱い」で詳しく解説しています。

財産分与の対象にならないものは?

財産分与の対象にならないものは、以下とおりです。

  • 婚姻前に築いた財産
  • 相続・贈与で得た財産

婚姻前に築いた財産

婚姻前に築いた財産は、財産分与の対象になりません。

婚姻前に貯めた預貯金、購入した株・不動産・車・家電等は、特有財産(固有財産)だからです。

ただし、独身時代に開設した口座を婚姻後も使用しており、どこからが婚姻後の貯蓄か区別がつかない場合は、財産分与の対象となることもあります。

相続・贈与で得た財産

相続や贈与で得た財産は、財産分与の対象になりません。

相続や贈与で得た財産は、特有財産にあたり、配偶者の存在とは関係なく生じたものだからです。

ただし、相続や贈与により得た財産でも、他方の配偶者がその価値の減少を防止し、またはその維持に寄与した場合には、例外的に財産分与の対象になり得ます。

離婚時に財産分与の対象とならないものについては、「離婚時に財産分与の対象とならないものは何か?」で詳しく解説しています。

財産分与の基準時はいつ?

財産分与は、原則として、別居時点の財産を対象とし、その対象財産の評価は離婚時を基準とします。

対象財産の範囲を確定するとき|別居時を基準とするのが一般的

分与対象財産の範囲を確定する基準時は、原則として別居時です。

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産ですので、夫婦が別居をした時点で協力関係が終了すると考えられるからです。

ただし、別居時を基準とすることで公平を欠くケースでは、別居後の財産の変動が考慮されることはあります。

なお、夫婦が別居をしていなければ、離婚時を基準に対象財産の範囲を確定します。

対象財産を評価するとき|離婚時を基準とするのが一般的

分与対象財産の評価の基準時は、原則として離婚時です。

不動産・株・車など、別居時と離婚時で価値が変動する財産は、基本的に離婚時の評価額を基準とします。

ただし、預貯金や保険の解約返戻金などは、基本的には別居時と離婚時で価値が変動しないため、別居時の評価額を基準とすることが一般的です。

財産分与はどのような割合で行うか?

財産分与は、原則として2分の1ずつ分けます。

専業主婦(夫)は、生活費を稼いでいたわけではないため、経済的な貢献度や寄与度が低いと勘違いされる方がいらっしゃいます。しかし、専業主婦(夫)が家事労働を一手に引き受けていたおかげで、他方が働きに出て収入を得られたと考えられます。そのため、専業主婦(夫)も、原則として2分の1を請求できる権利があります。

共働きでどちらかが正社員、どちらかがパートタイムで働くなど収入の格差がある場合がありますが、いずれの場合も2分の1ずつ分けることに変わりはありません。

ただし、どちらかが特殊な能力で高額な財産を築いた場合、2分の1ずつ分けると不公平になるケースがあるので、例外的な扱いとなります

財産分与の割合はどのようにして決められるのかは、「財産分与の割合はどのようにして決めるか?原則と例外を解説 」で詳しく解説しています。

財産分与請求権の時効|離婚後の財産分与請求の期限は?

財産分与請求権は、離婚の時から2年の除斥期間で消滅します。

そのため、財産分与調停・審判を検討している場合は、離婚成立の日から2年以内に申立てなければなりません。ただし、当事者間の合意によって財産分与をすることは、離婚後2年以上が経過してからでも可能です。

財産分与調停・審判は離婚後2年以内に申立てる必要がある

離婚後に財産分与の話し合いを試みたものの、協議がまとまらない場合は、財産分与調停や審判による解決が図れます。

財産分与調停・審判は、離婚後2年以内に申立てる必要があります。

2年以内に財産分与調停・審判を申立てていれば、調停・審判確定が2年を経過しても問題はありません。

離婚後に調停・審判で財産分与の請求権が確定した場合は、請求権は10年間有効となります。

当事者の合意があれば離婚から2年経過後も財産分与の話し合いができる

当事者の合意があれば離婚から2年経過後も財産分与の話し合いができます。

離婚後の財産分与に関しては、「離婚後の財産分与は可能か?隠し財産への対処法や注意点を解説」で詳しく解説しています。

財産分与に税金はかかる?

金銭による財産分与は、原則として税金はかかりません。金銭以外の場合は、譲渡所得税や不動取得税が課税される場合があります。

もっとも、一般的な財産分与の割合を超えて財産の分与がなされた場合は、その超過する部分に対して贈与税が課税される可能性があります。

金銭で支払う場合は原則非課税

金銭または金銭債権で支払われる場合は、原則、非課税です。

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して気づいた財産を清算する目的であることから、財産分与を受ける側も、支払う側にも税金は課されません。

金銭以外の場合は譲渡所得税や不動産取得税等がかかることがある

金銭以外による場合は、譲渡所得税や不動産取得税がかかる場合があります

例えば、不動産を分与した場合、分与した時点の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となりますので、財産分与をした側譲渡所得税がかかる可能性があります(ただし、居住用不動産については、3000万円の特別控除の特例が適用されます)。

不動産を取得した場合は、財産分与を受ける側に不動産取得税がかかります。

財産分与の額が過当な場合は贈与税が課税される可能性がある

次のような場合は、分与の方法(金銭かそれ以外か)によらず、贈与税が課税される可能性があります。

  • 分与された財産の額が共有財産の額その他すべての事情を考慮しても多すぎる場合
  • 贈与税を免れるために離婚したと認められる場合

例えば、婚姻期間が短く、蓄えがほとんどないのに、過大な分与を行う場合は、その多すぎる部分に贈与税が課税されます。

配偶者の一方に借金があり、債権者からの追及を免れるために離婚を仮装し、財産分与によって財産を移転させた場合なども、取得した財産の全てに贈与税が課税される可能性があります。

財産分与でよくあるトラブル事例は?

本章では、財産分与でよくあるトラブル事例を紹介します。

住宅ローンがオーバーローンのケース

住宅ローンの残額が不動産の評価額を上回る(オーバーローン)場合は、分与方法が制限されることが多いです。

ローンの残額が不動産の査定額を下回っていれば(アンダーローン)、売却代金でローンを完済できます。しかし、オーバーローンの場合は、不足分を自己資金で補う必要があり、それが難しいと売却そのものができません。

結果として、離婚後の住まいの整理や財産分与が長引いたり、合意できずに紛争に発展したりすることがあります。

住宅ローンが残っている家の財産分与や、オーバーローンの家は財産分与ついては、「住宅ローンが残っている家の財産分与はどうなる?」「オーバーローンの家は財産分与できるか?|ペアローンについても解説」をご参照ください。

夫婦どちらかが借金を抱えているケース

夫婦どちらかが借金を抱えている場合、財産分与においてトラブルになるケースがあります。

夫婦どちらかが借金を抱えている原因が、生活費の補填のために行われたのであれば夫婦が連帯して責任を負わなければいけません。一方で夫婦のどちらかがギャンブルや個人的な趣味で作った借金は財産分与の対象ではありませんので、この点の線引きをどこでするのか、夫婦間でトラブルになる可能性があります。

夫婦のどちらかが財産分与を拒否するケース

夫婦のどちらかが財産分与を拒否してトラブルになるケースがあります。

財産分与を請求されたら、原則として拒否ができません。しかし、感情的な対立や金銭的な問題などから、一方的に拒否されるケースも少なくありません。

この場合は、家庭裁判所に調停を申立てて解決を図ります。ただし、調停は1回で解決するとは限らず、複数回にわたって行われるのが一般的です。そのため、解決までに時間がかかることもあり、精神的・経済的な負担が大きくなることもあります。

財産分与が拒否できるケースがあるのか等については、「離婚時に財産分与をしない方法とは|財産分与は拒否できる?」で詳しく解説しています。

夫婦のどちらかが財産を開示しないケース

夫婦のどちらかが財産を開示しないため、財産分与が進まずトラブルになるケースがあります。

本来、財産分与を適切に行うには、互いの財産状況を明らかにすることが前提です。しかし、意図的に財産を隠したり、情報提供を拒んだりするケースもあります。この場合、協議が難航するだけでなく、不公平な分与になるリスクも生じます。

財産の開示を拒否された場合は、以下の方法が考えられますが、解決までの期間が長引く可能性があります。

  • 弁護士に財産分与をはじめとした離婚手続きを依頼する
  • 財産分与の調停を申立てる
  • 審判・裁判の中で調査嘱託を申立てる

夫婦のどちらかが財産の開示を拒否した場合の対応策については、「離婚時の財産分与で通帳開示請求は可能?拒否された場合の対応を解説」を参考にしてください。

専業主婦(夫)が平等に財産分与してもらえないケース

専業主婦(夫)が平等に財産分与してもらえずトラブルになるケースがあります。

専業主婦(夫)も、原則として、2分の1の財産分与が受けられますが、普段から夫婦の力関係に差があると財産分与を拒否される場合があります。

こうしたことを避けるために、専業主婦(夫)は離婚を決めたら、財産分与が受けられるのはどのようなケースか調べておいたほうがよいです。

専業主婦(夫)の財産分与については、「専業主婦の財産分与が少なくなるケースや事前に確認すべきこと」を参考にしてください。

財産分与がうまくいかない場合は弁護士に相談を

財産分与がうまくいかない場合は、弁護士に相談をおすすめします。

財産分与は当事者同士で行うのは困難な場合があります。感情的になって冷静な話し合いができないこともあるでしょう。財産分与の対象となるものがたくさんある場合、当事者同士の話し合いのみで平等に2分の1ずつ分けるのは困難です。

弁護士に依頼をすれば、スムーズに手続きが進められる可能性が高まります。財産分与がなかなか進まないとお困りの場合は、ぜひ弁護士に相談をしてください。

財産分与を弁護士に依頼した場合、どのぐらいの費用がかかるかについては、「財産分与の弁護士費用はどのぐらいかかるのか?相場の費用を解説」で解説しています。

まとめ

財産分与は、離婚後の生活を左右する重要な案件です。「私は専業主婦(夫)だったからもらえないだろう…。」と諦めずに粘り強く対応をしてください。配偶者との交渉が精神的に負担であると考えるのであれば、早い段階で弁護士に相談をしてください。

ネクスパート法律事務所には、離婚全般に強い弁護士が在籍しています。財産分与でお悩みの方はお問合せください。

初回の相談は30分無料となりますので、お気軽にご連絡ください。


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コラム監修者

石田 志寿

石田 志寿

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